今月の四苦八句   2016・7月

4✖9=36+8句=44

 

4✖9=36

8✖9=72

36+72=108

 

煩悩の数です

 

雑詠抄

 

堂々と現れ出し夏氷

一滴の滴連ねる夏氷

新宿の路地を駆け行く夏氷

水飯や辻褄合ふもあはずとも

人類の歴史と共にかたつむり

つかまへてすぐに手放すかたつむり

後悔の積もり積もれる蝸牛

かなぶんの観音様へ体当り

宝前やかなぶんぶんの転がれる

干しものを張り付きをれる黄金虫

端役とふ役の為所汗ぬぐふ

蟲干の形ばかりとなりにけり

風鈴や御大師さんの行脚像

図書館へ返す本あり大暑来る

むつくりと体を起こす大暑かな

往けば止み引けば鳴き出す行行子

点々とブルーハウスや行行子

白地もう着ることもなし日光下駄い

籐椅子を使つてをれば夕べくる

犬居れば人の集まる木下闇

夕蟬のやかましくもあり寂しくも

夕蟬や五木くづしの守子唄

硯洗ふ日なりし顔を洗ひ寝る

夏草や古戦場址の標石

夏草や大音声の車来る

夏負や豆腐の上の花かつを

神鳴や敬してみたり疎んだり

一歩踏むことの涼しや一歩踏む

ずぶぬれになりて楽しや大夕立

短夜も不平不満も明易し

身近なる未来の日々の明易し

待つたなしの仕事もたねど明易し

湯を浴びて胡坐をかけば夜の秋

夜の秋の欲しきは珈琲セレナーデ

木の膚に温みの残る夜の秋

大広間飛蝗追うには丁度よし

一口と云わずも茄子を頭から

鴫焼や父母無き日々のじわじわと

起重機もパワーショベルも夏休

向日葵の一本立てるトタン屋根

罪あると思はぬけれど毛虫焼く

また一人手を触れ去りし花氷

海中に都のあるぞ水中花

鍵かけていざ炎天へいでませる

鏡中の眉毛見てゐる不死男の忌

鐘の音のどこまで響く蟻地獄

蟻地獄両手に余る御宝前