4✖9=36+8句=44
4✖9=36
8✖9=72
36+72=108
煩悩の数です
雑詠抄
堂々と現れ出し夏氷
一滴の滴連ねる夏氷
新宿の路地を駆け行く夏氷
水飯や辻褄合ふもあはずとも
人類の歴史と共にかたつむり
つかまへてすぐに手放すかたつむり
後悔の積もり積もれる蝸牛
かなぶんの観音様へ体当り
宝前やかなぶんぶんの転がれる
干しものを張り付きをれる黄金虫
端役とふ役の為所汗ぬぐふ
蟲干の形ばかりとなりにけり
風鈴や御大師さんの行脚像
図書館へ返す本あり大暑来る
むつくりと体を起こす大暑かな
往けば止み引けば鳴き出す行行子
点々とブルーハウスや行行子
白地もう着ることもなし日光下駄い
籐椅子を使つてをれば夕べくる
犬居れば人の集まる木下闇
夕蟬のやかましくもあり寂しくも
夕蟬や五木くづしの守子唄
硯洗ふ日なりし顔を洗ひ寝る
夏草や古戦場址の標石
夏草や大音声の車来る
夏負や豆腐の上の花かつを
神鳴や敬してみたり疎んだり
一歩踏むことの涼しや一歩踏む
ずぶぬれになりて楽しや大夕立
短夜も不平不満も明易し
身近なる未来の日々の明易し
待つたなしの仕事もたねど明易し
湯を浴びて胡坐をかけば夜の秋
夜の秋の欲しきは珈琲セレナーデ
木の膚に温みの残る夜の秋
大広間飛蝗追うには丁度よし
一口と云わずも茄子を頭から
鴫焼や父母無き日々のじわじわと
起重機もパワーショベルも夏休
向日葵の一本立てるトタン屋根
罪あると思はぬけれど毛虫焼く
また一人手を触れ去りし花氷
海中に都のあるぞ水中花
鍵かけていざ炎天へいでませる
鏡中の眉毛見てゐる不死男の忌
鐘の音のどこまで響く蟻地獄
蟻地獄両手に余る御宝前