◎今月の四苦八句   2016・1月

雑詠抄

 

雪の降る撓れる竹の撥ねながら

雪の街エレベータの灯すれ違ふ

雪を来て動かず待てる招猫

刀剣の間なりし寒の間なりけり

眼下には町の明るき冬景色

冬の朝庭には△○□

確かめて見てはをらねど天狼星

武具飾りありて廊下の冬の音

木乃伊寝る東洋館を雪の積む

ガンダーラ仏も木乃伊も寒の内

養生をせむとや白湯を寒四郎

竹と竹触れあひ哭ける寒四郎

白湯甘くなりしと冬を過ごしゐる

冬灯し全棟点ることのなし

手を挙げて届かぬけれど冬の星

去年今年相撲の技に猫だまし

昨今は聞かなくなりし嫁が君

冬の夜の空にも鳥たち獣達

熱湯をくぐりて若布緑化する

大風を怖れて細き冬牡丹

地から沸く風の起れる冬牡丹

凍鶴の統べる一脚風の吹く

白鳥といふには惜しき湖の声

八王子駅に降り立つ虎落笛

一期は夢ただに狂へや虎落笛

冬の夜の空に平家と源氏星

ベルギウスリゲルはあれと冬銀河

出でたてば荒星に射されけり

町の灯と冬の星座の切れ目なし

雪折れの音する山の深さかな

しづり雪浄瑠璃姫供養塚

いきなりのしづれる雪を避けにけり

土踏まず叩きて炉話熊の段

木綿四手と云へるは楮紙を漉く

紙漉くうしろすがたと見てをれり

広島県熊野に紙を漉くを見し

紙漉の紙の厚みの腰使ひ

風花をこどもの遊ぶ声のする

嘉右衛門町例幣使道風花す