◎俳句月報  2017・11月号

目次

◎1.定例句会報

◎2.今月の吟行・10月7日、白みりんの里・流山

◎3.俳句の語句の読み方

◎4.今月の四苦八句

◎1.定例句会報  2017・10月  2017・10・22

入選句

 

色鳥や土蔵造りの小間物屋       オミ

馬肥ゆる遠野駅舎の大時計       シミ

小鳥来るそろばん塾の児等の声     オミ

老いぬれば柚味噌田楽二人酒      ナミ

後ろから風の押し来る花野かな     チシ

いただきし黄瀬戸の茶碗杜鵑草     ヤミ

名月や海を平らに烏帽子岩       アヒ

一筋の秋風受ける風力計        アノ

月白やむかしは父と貰ひ風呂      イカ

駅員に手渡す切符秋惜む        ヤミ

照り映えて仏のおわす初紅葉      ハイ

一の坂過ぎて二の坂初紅葉       アノ

水音に食みだす旗亭初紅葉       アヒ

湯殿山下る山路や初紅葉        チシ

 

 

上記の句の内、添削句

 

・原 句 老いも良し柚味噌田楽二人酒

・添削句 老いぬれば柚味噌田楽二人酒

 

・原 句 後ろから風が押し来る花野かな

・添削句 後ろから風の押し来る花野かな

 

・原 句 杜鵑草黄瀬戸茶碗をもらいけり

・添削句 いただきし黄瀬戸の茶碗杜鵑草

 

・原 句 名月や烏帽子岩置く海平ら

・添削句 名月や海を平らに烏帽子岩

 

・原 句 駅員に切符手渡し秋惜しむ

・添削句 駅員に手渡す切符秋惜む

 

・原 句 照り映えて仏おわすか初紅葉

・添削句 照り映えて仏のおわす初紅葉

 

・原 句 一の坂あえぐ二の坂初紅葉

・添削句 一の坂過ぎて二の坂初紅葉

 

・原 句 清流に張り出す旗亭初紅葉

・添削句 水流に食みだす旗亭初紅葉

 

・原 句 湯殿山下る山路初紅葉 

・添削句 湯殿山下る山路や初紅葉 

 

 

●添削のポイント ●●●

 

一句の中心になるものを浮き上がるように。

 

それを邪魔するものを抑えた表現にしています。

 

・杜鵑草と黄瀬戸(いただいた黄瀬戸の茶碗を強調)

・あえぐと初紅葉’(あえぐ二の坂では、初紅葉が活きない。二ノ坂で出会った初紅葉)

・清流と初紅葉(清流の美しさが初紅葉の美しさを消してしまう)

・老いも良し(答えが出してしまっては…そこで完了)

・名月と烏帽子岩(美しいもの二つ。違うものを挟んで、ぶつかり合うことを防ぐ)

・「切符手渡す」か「手渡す切符」(行為ではなく、物を示して秋惜むを表現)

・「仏おわすか」と「仏のおわす」、断定がよい

・「山路や」と「や」入れて初紅葉を強調

 

 

 

◎2.  今月の吟行 10月7日 白みりんの里・流山

  

於・ 一茶双樹記念館

 

          
降り立ちし街の駅舎の蔦紅葉        チシ
町中の切絵行灯秋の声
スカイツリーを遠くにしたる花野かな
秋風や近藤勇陣屋跡
秋高し赤城神社の大鳥居

         

 
町筋や切絵行灯秋澄める          シケ
入鋏の省略切符秋日和
階の隅の苔むす秋思かな
末枯や墓を見下す閻魔同
漂へる流れは海へ雁渡る
          


江戸川の流れ動かぬ草の花         イア
万上と天晴通り藤袴
石榴の実柴折戸押して双樹庵
参道に無患子拾う雨上り
双樹庵光悦寺垣初紅葉

 

          
終点の駅に降り立つ蔦紅葉         オミ
杜鵑草盛りの庭でありにけり
雨あがる江戸川土手の虫の声
石段の胸突き八丁秋深し
流山みやげは裾のいのこづち
          


流山天晴通り薄紅葉            シミ
秋冷やガラス細工の万華鏡
秋麗日の差し込める庚申塔
流山赤城神社や秋高し
草の実を飛ばし流鉄赤城号
          


おり立ちてみりんの香と出会う秋      ミノ
街角に切絵行灯時雨けり
流山広小路みち秋の風

路面より低きに神社秋の雨
雨あがる江戸川土手の萱の群
          


雨上がる気配や駅の蔦紅葉         アヒ
柿の天近藤勇陣屋跡
煙突のけむり二筋秋の風
蛇行する道に見え来る柘榴の実
社殿へと暗き石段暮の秋
          


天晴という名の味醂時計草         アノ
そぞろ寒ガラス越しなる閻魔様
秋の昼丁子屋というレストラン
店店に切絵行灯薄紅葉
無患子を赤城神社に探しけり
          


やや寒の紙の切符のありどころ       ヤミ
山茶花や一茶の気満つ双樹庵
踏石の一つの窪む秋深し
良さげなる鰻屋のこと白木槿
単線の行くも帰るも柿の秋
          


流山加六丁目金木犀            トンボ
音の無き音の聞こゆる杜鵑草
箒目を立てて秋風通りけり
秋の風青面金剛目をつぶる
土手行けば八千草蟲の渡し跡

 

 

◎3.俳句の語句の読み

 

※佳句を採り上げているものではなく、語彙の読みを示しているもの

※適切な言葉や季語、文字がつかわれているか?随分とあやしいものがありますから注意ください。

 学ぶべきものはどれかは、読者が判断ください

 

 

●涼新たたまさか食事五観文

 

…食事五観文は、「じきじごかんんもん」。
  一つには功の多少を計り彼の来処を量る
  二つには己が徳行の全欠と忖って供に応ず
  三つには瞋を防ぎ過貪等を離るゝを宗とす
  五つには道業を成ぜんが為に当にこの食を受くべし
 禅宗では食事の前にこの五つの観文を唱えてから食事をとる。鶴見の総持寺など精進料理を頂くときに体験できます。最近では略されることが…。
 内容は、自分が何をしているかを計り食材を食するに値するか、こにとどくまでに掛けて居る人達の苦労に思い致し、自省し、徳行に欠けるところがないかと忖り、瞋や過食やむさぼりを離れ、この食事を道業を成ぜんが為に受けるべし。というような事でしょうか。

 

 

●赤のまま伊呂波四十八文字

 

…伊呂波四十八文は、「いろはしじゅうはちもんじ」

 

 

●秋立つと岬隠りに島一つ

 

…岬隠りは、「みさきがくり」。

 

 

●けざやかな羲之の書拡ぐ今朝の秋

 

羲之は、「ぎし」。王羲之のこと。

 

 

●秋雲の高くチェゲバラ展光る

 

…チェゲバラ展は、過日、恵比寿で開かれていた、キューバ革命の英雄として名高いチェ・ ゲバラが撮った写真の展覧会のことでしょう。

 

 

●無住寺の鏝絵剝落蟬時雨

 

…鏝絵は、「こてえ」。

 

 

・幕間の低き騒めき秋扇

 

…騒めきは、「ざわめき」。

 

…秋扇は、「あきおうぎ」。秋になって使われなくなった扇のことで秋の季語。

 

 

●讃美歌で送る喪葬白木槿

 

…喪葬は、「そうそう」。「広辞苑」に、死者の喪と葬式。

 

 

●招かれし吾も上座に生身魂

 

…生身魂は、「いきみたま」。秋の季語。

 

 

●蔓荔枝繁れる葉裏実の三つ

 

…荔枝は、「れいし」。苦瓜の別名。秋の季語。あるいは、ライチのこと?。この場合は、季語ではない。

 

 

●漁り火や烏賊釣船の集魚灯

 

…漁り火は、「いさりび」。多くは、「漁火」と書く。漁火は、海上遥か、集魚灯を煌々と光らせている烏賊釣船の明り。

 

 

◎4.今月の四苦八句   2017・10

雑詠抄

 

秋冷の刻刻刻と刻々と

パワード幾つも持てる暮の秋

毘樓博叉(ビルバクシャ)秋冷至る東大寺

適量を残す思案の落葉掻

暗渠とて道は道なり吾亦紅

音に聞く溢蚊(あぶれが)の音の来る

納豆に玉子なれどもやや寒し

菊の鉢一つ加はる朝日かな

重陽の日なりし山の水掬ふ

山の水掬うて菊の節句の日

みやげにと毬栗三ついただきぬ

これといふことはなけれど秋惜む

切り口の切れ目を探す暮の秋

靴下を三足買へる冬隣

甘辛の団子を買ひに暮の秋

木枯や新聞全形吹かれゐる

柿の実や蒸気機関車進み行く

阿字池の水沫のさはぐ初紅葉

爪染める人の指さす思ひ草

明六つ鐘の音とどく冬隣

手繰りても応へてくれぬ烏瓜

烏瓜一つに集ふ十五人

菊の日や七百歳といふ慈童

勝虫や日月すすむばかりなる

笑ひをることを笑へ秋の風

門被松の手入れの始まれり

へばりつく姿なりけり松手入

神楽坂兵庫小路や松手入

秋霖や水占いの文字の浮く

秋霖や丹田ぼんのくぼ軋む

丹田へ響き伝はる秋黴雨

うそ寒の隠れて赤きそばの茎

やや寒の日月星辰過ぎ行ける

鬼柚子と吾身と重ね合せゐる

柚子の香の一点晴の夕餉なる

戻り来て扉開ければ柚子香る

砂ばかり詰まる貝なり秋の行く

秋惜む葛飾北斎肉筆画

迂闊にもべつたら市へ道迷ふ

人出とも言へぬべつたら市にゐる

とろろ汁嫌ふばかりの男ゐる

めし呉れと寄りくる猫の秋の暮

阿と吽と二つの対す暮の秋

飾られて砧ありけりつづれさせ