◎俳句月報  2018・02月号

目次

◎1.定例句会報

◎2.今月の吟行・1月5日、深川七福神巡り

◎3.俳句の語句の読み方

◎4.今月の四苦八句

 

◎1.定例句会報  2018・1月  2018・1・28

入選句

 

目を拾う眼しょぼしょぼ毛糸編       ヒタ

大小の手形を残し雪だるま         シミ

賀状来るカラープリント溢れ出る      ナミ

太箸や家族といふも子と子と子       イカ

冬入日八頭身の影の足           ヒタ

買初や墨持て銀座四丁目          シミ

十人と一匹の猫年新た           ナミ

揺れ出せる繭玉かんなぎめかんなぎ     イカ

鏡餅声まつすぐに豆剣士          アヒ

 

 

●添削して採用した句

 

原 句 目を拾う目はしょぼしょぼと毛糸編

 

原 句 大小の手形残りし雪だるま

 

原 句 太箸や家族といふも子と子の子

 

原 句 初買の墨持て銀座四丁目

 

原 句 十人と一ぴき集い年新た

 

原 句 繭玉の揺れてかんなぎめかんなぎ

 

 

◎2.  今月の吟行 1月04日 深川七福神巡り

         
福詣善男善女四十人           アノ
小名木川も蕉翁像も松の内
初景色萬年橋と清洲橋
小寒の白波立てる小名木川
福詣願い事など口にせず
万歩計皆携えて福詣
深川の飯屋五日の列をなす

 


新年の先づは挨拶福詣          チシ
初電車女子専用に乗り込みぬ
受験子の健康願ふ福詣
初護摩や堂に響ける大太鼓
仙台堀川の桜の冬芽かな
寒の入大川端の波静か
福巡りリュックの中へ朱印帳

          


七福神詣づは一番寿老人         イア
福詣境内に椅子小座布団
境内にダルマストーブ手をかざす
護摩堂に人の溢れる五日かな
雪催い歩き通して深川めし
門松や尾車部屋の静かなる
さざ波立つ仙台堀や枯木道

          


辰巳より笑い声来る寒の街        シミ
福詣犬の形のあめ細工
悴みて合わぬ合掌不動尊
弁天の視線受けるや寒牡丹
福詣みくじ引く娘の飾り爪
万年橋越え来る人の寒の息
鯛焼屋並ぶ門前仲町に

          


去年今年元旦二日今日三日        ハイ
宝船夢を見たいとうたた寝す
元旦の窓のカーテン解き放つ
初電話テンション高き孫の声
屠蘇を酌む言の葉多くなりにけり
初詣晴れ着姿は今いずこ
みながみな晴れやかな顔けさの春

          


喧噪を白き顔行く福詣          ヤミ
冬ざれや千円着物吊るしあり
不動堂に厄除け願ふ寒さかな
福詣弁天堂に水清く
しんみりと冬川動く芝翫河岸
手締はや風に乗りくる七日かな

 

◎3.俳句の語句の読み

・もがり笛宝篋印塔あるばかり

 

…宝篋印塔は、「ほうきょういんとう」。

・試し切り控へてをれる火床祭

 

…火床祭は、「ほどまつり」。鞴祭のこと。

 

・裘市の人出を分けゆける

 

…裘は、「かわごろも」。

 

・木醂に集ってゐる夕日かな

 

…木醂は、「きざわし」。木に付いたまま甘くなった柿の実。富有柿や次郎柿などの甘柿。

 

・信楽の狸を濡らす時雨かな

 

…信楽は、「しがらき」。信楽焼の狸。

 

・板碑読む銀杏落葉を払いつつ

 

…板碑は、「いたび」。石造りの卒塔婆。緑泥片岩のような平らな石を用い、頂を三角形に作ったもので、多くは上部に仏の種子、下部に偈・紀年・氏名などが彫られている。関東地方、埼玉県中部、都幾川地区に特に多い。

 

・田中の鏡獅子像石蕗日和

 

…田中は、「でんちゅう」と振り仮名があり、これで平櫛田中とわかります。六代目菊五郎をモデルにした鏡獅子像のことで、国立劇場のロビーに飾られています。

 

・柿剝いて五風十雨を口ぐちに

 

…五風十雨は、「ごふうじゅうう」。五日に一度風が吹き、十日に一度雨が降ること。転じて、風雨その時を得て、農作業上好都合で、天下の太平なこと。

 

・法話聞く顔ぶれ同じ十夜粥

 

…十夜粥は、「じゅうやがゆ」。浄土宗の十夜念仏法要の結願の日に供される粥。季語。

 

・秋うらら賽銭箱に於福面

 

…於福面は、「おふくめん」。

 

・秋没日文字をかすかに一葉碑

 

…秋没日は、「あきいりひ」。

 

・北洲といはれし地なる冬近し…北洲は、「ほくしゅう」。江戸の北方に当たるところから江戸新吉原の異称。清元の曲「北洲」は、文政元(1818)年、太田蜀山人が作詞し、吉原の元芸者川口お直が作曲。吉原の行事と四季をうたっている素踊りの曲があります。一口に吉原と言っても、大まかに、北洲と呼ばれていた時代、遊女解放令の後の明治時代、その後、赤線などと呼ばれた各時代があり、その時代相を意識した句。

 

◎4.今月の四苦八句   2018・01

雑詠抄

 

雪の降る太郎へ次郎へ三郎へ

一叢のとくさ目差して雪降れる

木賊へと雪の降りくる痛さうに

風花のかかれる東京葛飾区

つくばへる南天の実の揺れしかば

大寒の一句拾える歓喜天

降る雪の無口の男のやうなりき

毎年よ能楽堂の鏡餅

電線の込み合ふ町の寒夕焼

銭湯の帰りの道の寒夕焼

冬眠の覚めて出て舞え古狸

静かなることの果てなき雪の山

葛湯溶く淡路島など生むごとく

雑炊へ玉子を落とす声上る

雪明り壺中の天へ行くころか

雪吊や反橋平橋浄土池

寒波来る更けゆく夜のやうに来る

探梅の道を迷える夢の中

春隣千枚漬へ七味ふる

門冠り松を飾れる雪の来る

名を呼びて肩を叩きて新年会

雪掻きの音へ加はる機の来たる

今年又寒念仏に会はぬなり

雪道に足をとらるる意気地なし

水洟の顔の映れる鏡かな

歳時記に一項ありて水洟

搗きたての寒餅売つて駄菓子店

曳売の腰を屈める蜆買ふ

探梅の不首尾笑つてわかれけり

凍鶴の凍て解かざるは何ならむ

役に立つことにあらねど冬の虹

煮凝や思ひ出したくなきことも

海鼠好くひとへ話を合せけり

紙干すや紙の表裏の決まりつつ

寒林や何に使ひし赤きもの

怒れるも笑ふもをみな息白し

幾度も訊き返される薬喰

五六羽のふくら雀のめでたさや

銭湯の煙の上る小正月

寒波来る紙もて切りし指の傷

松籟のぴしりと決まる寒波来る