◎俳句月報  2018・04月号

目次

◎1.定例句会報

◎2.今月の吟行・3月3日、あしがりの里/瀬戸屋敷ひなまつり

◎3.俳句の語句の読み方

◎4.今月の四苦八句

 

◎1.定例句会報  2018・3月  2018・3・25

入選句

 

春の雨レンガ倉庫の雑貨店       オミ

菜の花や畦道沿いの無人駅       アノ

酒も好き俳句なお好き春炬燵      アノ

パンの耳残したままに小鳥引く     コフ

火渡りの行者が喝と地虫出づ      アヒ

彼の歌に応えて彼の句西行忌      シケ

砂浜に貝殻光る春ショール       イケ

歌一首諳んじており西行忌       シケ

日本橋道路元標西行忌         シミ

西行忌墨磨る音の久しかり       コフ

春愁や洗う食器の重さにも       イケ

 

 

※添削例

 

原 句 春の雨レンガ倉庫の小間物屋

添削句 春の雨レンガ倉庫の雑貨店

 

原 句 菜の花や畦道に沿う無人駅       

添削句 菜の花や畦道沿いの無人駅 

 

原 句 酒も好き俳句も好きで春炬燵

添削句 酒も好き俳句なお好き春炬燵

 

原 句 小鳥引く残したままのパンの耳

添削句 パンの耳残したままに小鳥引く

 

原 句 火渡りの行者の呪文地虫出づ

添削句 火渡りの行者が喝と地虫出づ 

 

原 句 砂浜に光る貝殻春ショール

添削句 砂浜に貝殻光る春ショール

 

原 句 春愁や洗う食器の重たかり

添削句 春愁や洗う食器の重さにも

 

※類想・類句がありました。

 

●公魚の夕日の色に釣られけり

 

歳時記にある句 ⇒ ●釣り上げし公魚夕日まみれなる

 

先行句があるときは、それを超える句を目指しましょう。

 

 

 

◎2.  今月の吟行3月3日 あしがりの里・瀬戸屋敷ひなまつり

作品抄

          
囁くは春の小川よ道祖神        オミ
青踏のふわふわの畦である
薬医門くぐり賑わう雛の家
轟きてポン菓子生まる春うらら
春の昼阿吽の呼吸の猿まわし
          

 

雛の里へ乗合バスの込み合いて     イア
竹筒の中に三体おひなさま
うららかや流れに沿うて道祖神
ポン菓子を皆に手渡す雛会場
陽春や薬医門前猿回し
         

 
ありがたしポン菓子頂く雛の家     チシ
濡れ縁の春の日ざしと小座蒲団
雛まつり郷土弁当持ち歩く
春の風道祖神あるバス乗り場
山笑ふ全員攫ふエレベーター
          


陽光のあふれるばかりひな祭      ミノ
わらぶきの屋根に鎮まる春の風
郷弁という弁当も瀬戸屋敷
わが家と同じ顔する雛かな
うららかや人の輪の中猿まわし
          


雛の間の大正琴の奏者かな       アノ

町おこし老いも若きも雛祭
ポン菓子の音の聞こえる梅の昼
男衆は陰で働く雛の里
山笑う麓を車東名道
          
残雪の山を車窓にひた走る      アヒ
連なれる山さまざまに笑ひたる
人出入りする茅葺きの雛の家
即売の弁当にあるふきのたう
石橋の池の水草亀鳴けり
          
雛まつり地元野菜の店の込む     シミ
眠る子の手より離れる紙雛
瀬戸屋敷馬酔木の花の咲きこぼれ
ポン菓子の爆ぜて白煙山笑う
亀鳴くや三百年の瀬戸屋敷
         


富士山やシャトルのバスへ春の風   ヤミ
ポン菓子の音懐かしき雛まつり
薪くべて甘酒を煮て瀬戸屋敷
ひな祭り錦糸玉子のちらし寿司
芽吹き待つ道祖神二基停留所
          


山笑ふ超満員のシャトルバス    トンボ
東風吹かば野に出て転ぶところまで
青き踏む地球をおよそ千メートル
野にいでて三月三日風まかせ
旧庄屋屋敷へ雛集まれる

 

 

◎3.俳句の語句の読み

●単純に語句の読み方とその語句の意味を示しています。 

 

・太箸や家族といふも子と子の子

 

…太箸は、「ふとばし」。新年の季語。

 

・山の背にかかる太白寒の入

 

…太白は、「たいはく」。「太白星」のこと。金星の漢名。

 

・繭玉の揺れてかんなぎめかんなぎ

 

…かんなぎめかんなぎを漢字で書くと「覡巫」。覡は、男のみこ(おかんなぎ)巫は巫女で、女のみこ。

 

・初買のコーヒー永久の香のごとく

 

…永久は、「とわ」。

 

・摩訶不思議ひびかび生えぬ鏡餅

 

…摩訶不思議は、「まかふしぎ」。摩訶は、梵語の音写で大きいさま。多いさまの意。

 

・鏡餅終の住処に鎮座せり

 

…終の住処は、「ついのすみか」。

 

・鏡餅巫女の元結金色に

 

…元結は、「もっとい」。

 

・純白の原に丹頂緋をこぼす

 

…丹頂は、「たんちょう」。頭頂部が赤いのが特徴。古来、鶴を「たづ」「つる」と言っていますがそれがこの丹頂のこと。

 

・晴着の娘挙りて向う成人式

 

…挙りては、「こぞりて」。

 

・首竦め寒波の日々を遣り過ごす

 

…首竦めは、「くびすくめ」。

 

・五六と読んでかしまし小正月

 

…五六は、ルビが「ふのぼり」と振ってありました。苗字の一つ。こう書いて「ふかぼり」と云う苗字もあるようです。

 

・笈摺の同行二人年暮るる

 

…笈摺の同行二人は、「おいずるのどうぎょうににん」。「おいずり」とも。巡礼などが着物の上に着る袖なしの薄い衣服「南無大師遍照金剛」と墨書してある。

 

・ジャンケンや同じ手出して塊太の忌

 

…塊太の忌は、多分、洋画家で詩人の村山槐多のことでしょう。「むらやま かいた。1896年9月15日~ 1919年2月 20日没」。

 

 

◎4.今月の四苦八句   2018・03

雑詠抄

 

蛇穴を出づ風鐸の鳴りにけり

蛇穴を出づ赤門寺なりし

残る雪山に残して鳥獣

振向きて四方の干潟の中にゐる

春の海十キロほどに在りとなむ

一天のたちまち曇る野を焼く火

野を焼ける日なりし道路雉の出づ

龍天に登る尻尾をつかまえる

切株に腰を下ろして春なりし

春や春らくだの馬さん聞きながら

陽炎や八十年は夢なりし

応仁の乱と云はれてかぎろへり

胸元へぶつかつてくる春の風

鎌倉や声なくかげろふ立ち塞ぐ

向うからこちらの岸へ雲雀かな

春眠の三千院へ着きにけり

春水の来るを迎へて見送れる

踏切の一本桜満開に

桜満つ闇の深さの無音界

逃げ水の水を追ひ行く心かな

土筆摘むことにひたひた執着す

逃げ水の水の正体追ひ行けり

悲しみは代はつてやれぬ牡丹の芽

空襲のごとく野焼のはじまれる

向うからやつてくるから春の風

春風やモヒカンの靴履きもして

もの思ひなどは捨てよと春の風

不意打ちのやうに彼岸の入となる

相輪を動かしてゐる春の雲

名残り雪あるかもしれぬ西行忌

神楽坂上りし鼓動西行忌

東風の吹く神楽坂見番稽古処

東風吹かば羅宇屋の笛の懐かしき