◎俳句月報  2019・02月号

目次

1. 1月定例句会報

2. 1月句楽吟行 私の恵方詣

3. 俳句の語句の読み方

 

◎1.定例句会報  2019・1月  於・2019・1・27

入選句

 

帯に挿す根付の朱房女正月       イケ

大寒や無言の衆の始発乗る       コフ

老いて尚夫ここにあり大嚔       オミ

大寒や揉まれて拝す観世音       ヤミ

北風や過敏に開く自動ドアー      オミ

これと言う事なきことの初便り     ミノ

小走りに年始参りの親子ずれ      ハセ

薄墨の友の文来る木の葉雨       ウチ

吾にまだ勝つ気のありし歌かるた    シケ

冬帝の居すわっている四ツ目垣     ミノ  

籠の中文鳥鳴きて春の来る       タリ

待春や辻占煎餅なんと出る       アヒ

若菜籠如何に過ごさんロスタイム    チシ

買初や姪の結婚のし袋         イア

犬吠えて百羽の鴨の飛び立てリ     シミ

底冷やいまも富山の置薬        シケ

 

 

 

添削例

 

われにまだありし負けん気歌かるた     添 削 吾にまだ勝つ気のありし歌かるた

冬帝の居すわっておる四ツ目垣       添 削 冬帝の居すわっている四ツ目垣

籠の中文鳥鳴きて春が来る         添 削 籠の中文鳥鳴きて春の来る

待春や辻占煎餅吉と出て          添 削 待春や辻占煎餅なんと出る

ロスタイム如何に過ごさん若菜篭      添 削 若菜篭如何に過ごさんロスタイム

買初に姪の結婚のし袋           添 削 買初や姪の結婚のし袋

犬吠えて百羽の鴨の飛び立ちぬ       添 削 犬吠えて百羽の鴨の飛び立てリ

底冷やむかし富山の置薬          添 削 底冷やいまも富山の置薬

 

蛇足

 

地声で歌われる歌、本人は、気持ちが良いのでしょうが、聞き苦しいと感じる人も。

 

地声で歌われるアリアを想像すれば容易に。

 

これは、すべてに共通する事ではないでしょうか?

 

俳句もまたしかり。

 

上掲の句の中にも。

いつものことですが添削には、これを避けようとすれば改作になってしまう恐れがあります。

 

いつもどの句と指摘していませんが、

自分で思い当たることがあるでしょう。

 

上質の俳句の誕生のカギは

自得して初めて得られるものです。

 

添削は、そのヒント提供に他なりません。

 

口を開けて待っていても幸運訪れません。

 

◎2.  今月の句楽吟行 私の恵方詣   1月吉日

          

自由に恵方詣、各自それぞれ自由に参拝

 

●江戸最初山手七福神

●柴又帝釈天・成田山新勝寺

など

 


紅梅にしばし足留め仰ぎけり      チシ
七福神巡り終へたる昼餉かな
七福神二福の揃ふ妙円寺
福詣りセレブの街のマーケット

 

         
七福神巡り迷いて辿り着く       イア
福詣化粧地蔵に紅をさす
一寸法師池冷たかろ瀧泉寺
歩き列長く乱れる初詣         

          


白金の上り下りの七福神        オミ
おみくじを冬芽桜に結びけり
水鏡七日の空を映しおり
巡りきり膝を摩れる初詣

 

          
初電車「清正公様」の白金へ      アノ
山の手の坂また坂の福詣
創業は明治の八百屋福寿草
行人坂下り二福を詣でけり

          


日当りて影も膨らむ初雀        アヒ
薄暗き祠にでんと鏡餅

人日や目黒不動の男坂
濡れそぼつ水掛不動寒に入る

 

          
福詣魚籃坂より始まれり        シミ
大円寺行人坂の初雀
初鳩や目黒不動を飛び立てる
買初や目黒不動の守り札

 


 清正公覚林寺より始まれり       ヤミ
風寒し御顔厳しき大黒天
トトと足行人坂の太鼓橋
浄土宗弁財天や背に冬陽

          
柴又の帝釈天へ初詣         ハセ
初詣うなぎのみやげ帝釈天
初詣遠き日思う帝釈天
帝釈天おでんの湯気や初詣

 

          
厄年の子と連立ちて初詣       シケ
初詣護摩のけむりを足腰に
初春や金箔載せし菓子を買ふ
幼子に御慶申して申される  

初参りうんたらたーかんまんと  トンボ
冥途への旅の寄道初詣
大泣きの子どもの声も初詣
喪なひし時間の行方去年今年

◎3. 俳句の語句の読み

・しぐれくる妹山背山妹背橋

 

…妹山背山妹背橋は、「いもやませやまいもせばし」。六義園にある名勝。

 

・しぐれくる青蓮院の道問へば

 

…青蓮院は、「しょうれんいん」。京都市東山区粟田口にある天台宗の門跡寺院。仏画「青不動」をなど所蔵。天明八年(1788年)に、大火によって御所が炎上しました時に、後桜町上皇は青蓮院を仮御所としてご避難され、住まわれたことで通称を「粟田御所」ともいう。

 

・子も母も父も歴階七五三

 

…歴階は、「れきかい」。きざはしの一段ごとに両足を揃えることなく、片足ずつ駈けて急ぎ上ること。普段われわれが石段などでやっている。正式参拝には一段ずつ両足を揃えて上り下りする。

 

・笞持ち冬帝来る日なりけり

 

…笞持ちは、「しもともち」。笞は、むち。竹などで作った細長い棒。

 

・愛日の伊達政宗を仰ぎ見る

 

…愛日は、「あいじつ」。「春秋左伝」文公七年の注「冬日愛すべし、夏日畏るべし」から、冬の日光。

 

・頭の芋隅に売らるる酉の市

 

…頭の芋は、「とうのいも」。八頭のこと。酉の市では古来より(とうのいも)とも呼ばれ、人の頭に立つように出世できるといわれ、さらに一つの芋からたくさんの芽が出ることから「子宝に恵まれる」という縁起物。今は一軒だけしか売っていませんが以前は、芋を何個か笹竹に刺したものを担いで歩いている人をよく見かけました。

 

・寒声や三帰依文と心経と

 

 …寒声は、「かんごえ」。冬の季語。
 …三帰依文は、「さんきえもん」。

 

・返り咲く白き紫陽花金王像

 

…金王像は、「こんのうぞう」。金王八幡神社にてと前書きがります。初めて聞く神社。同社のホームページには金王八幡宮(こんのうはちまんぐう)とあり、金王丸木像については、「渋谷金王丸常光のちの 土佐坊昌俊(とさのぼうしょうしゅん)は源義朝、頼朝親子に仕えた武将。木像は、17歳のとき保元の乱出陣の折自ら彫り、形見として母に残したもの。金王丸の名声は高く、のちに神社の名称となる」と書いてありました。土佐坊昌俊といえば京都の大売出しのルーツ・誓文払いの神様として有名です。

 

・水霜の枝払いつつ庭師入る

 

…水霜は、「みずしも」。

 

・生月の浦の教会秋日影

 

…生月は、「いくつき」。長崎県の平戸島の北西にある島、生月島のことでしょう。