◎俳句月報  2019・03月号

目次

1. 2月定例句会報

2. 2月句楽吟行 湯島天神・不忍池

3. 俳句の語句の読み方

◎1.定例句会報  2019・2月  於・2019・2・24

 入選句

 

※桟橋へ小舟連ねて水温む         シケ  原 句 桟橋へ連なる小舟水温む

山笑う高くなけれど御神体         シミ  原 句 高からずもご神体なり山笑う

松越しに六角堂や磯千鳥          シケ  原 句 磯千鳥六角堂は松越しに

※着く島の菜の花畑胡麻油の香       イア  原 句 菜の花や下船の島に胡麻油の香

春光へ漕ぎ出す櫂の水しぶき        ヒタ  原 句 春光や漕ぎ出す櫂の水しぶき

春寒や下着揃へて夫出張          ヒチ  原 句 春寒の下着揃へて夫出張

山宿の朝の湯壺や牡丹雪          アヒ  原 句 山宿の朝の湯壺に牡丹雪

鶯や山の目覚めを促せる          アヒ  原 句 鶯や山の目覚めを促せり

踝に寄せくる波や鰆東風          シケ  原 句 踝に寄せるさざ波鰆東風

春浅し父の遺せる織部皿          アヒ  原 句 春浅し父の遺せし織部皿

踏青や御苑の芝の土竜穴          アノ

観梅や起伏の丘を杖ついて         イケ

乗り遅れ一人バス待つ余寒かな       ヒタ

塾の子の九九の暗誦日脚伸ぶ        チシ

 

※原句の字句を余りいじらぬようにしているので、これで良し、と言う事ではない。

さらに別の発想を!!

 

 

その他の添削句

 

原 句 春寒し声の響ける石切場     添削 春寒し響ける声の石切場

原 句 春光や遊覧船のデッキ席     添削 春光の遊覧船のデッキ席

原 句 春耕の少し間のあり散居村    添削 春耕に未だ間のある散居村

原 句 青踏の知らぬ小犬に擦り寄られ  添削 青踏や知らぬ小犬に擦り寄られ

 

「や」と「の」の違いを理解していないように思われます。

 

◎2.  今月の句楽吟行 湯島天神・不忍池   2月2日

         
撫牛の撫でられ光る梅三分            オミ     

梅の花一つの夫婦生れけり
梅の庭八重子の台詞耳にあり
着脹れて上り下りの坂の街
不忍の池に憩うや春隣

          


日脚伸ぶ天神様の屋台店             チシ
冬うらら不忍池のボートかな
枯蓮の中にひと際弁財天
好日や花芽ふくらむ池の端
春近し弁天堂の朱色かな

          


カルメ焼ふくらみ割れる梅まつり         イア
筆塚に鏡花銘あり梅硬し
合格の絵馬重なれる百萬枚
不忍池の水脈のゆるやか春隣
都鳥塒はどこへ俯瞰する

          


白梅やそれほどまでに寄らずとも          シミ
天神の天水桶の水ぬるむ
紅梅や恋の成就の絵馬紛る
天神の表鳥居に春の人
打掛に春の光のこぼれけり

          


枯蓮の刈られ水面の現るる             アノ
花婿の表情固く梅二月
絵馬かける場所を探せる受験生
春近し極彩色の弁天堂
節分を明日に歩く湯島かな

          


匂ひ来る綿飴屋台春隣               アヒ
早早と御礼の絵馬や梅白し
動くもの鷭の二羽ゐる蓮の骨
スワンボートを眼下にランチ冬日濃し
晴れ渡る忍ケ岡や春きざす

          


受験子の外語の絵馬や天満宮             フチ
紗綾型のことを教はり梅白し
梅の庭新婚のゐて吾は金婚
指先の土起こす芽や春隣
春近し緑青光る弁天堂

          


下乗札を礼し参道梅の花               ヤミ
絵馬掛けてにこりと笑ふ春の人
連なりしスワンのボート二月来る
春光を纏へる池や弁天堂
新夫婦の笑顔や春の動きけり

          


手袋へ指突込んで春を待つ               トンボ
白梅や夢を持寄る受験生
白梅の香りの中の受験生
参道も屋台も梅の香る中
撫牛の頭の光る梅の頃

 

◎3. 俳句の語句の読み

・黄鐘の鐘の音ひびく去年今年

 

…黄鐘は、「おうしき」。黄鐘調のこと。京都妙心寺にある黄鐘調の鐘は国宝になっています。

 

・玄玄と山のありけり返り花

 

…玄玄は、「げんげん」。

 

・小夜時雨故山の夢に母のゐて

 

…故山は、「こざん」。故郷の山、ふるさと。

 

・緞帳の下りてロビーの裘

 

…裘は「かわごろも」。緞帳が下りた後といえばこの句では休憩に入ったところ。このタイミングでの裘の在りようが判然としません。間に合うように駈けこんで来たのなら人でしょうけれど。

 

・メビウスの輪に群れる子等冬日和

 

…メビウスの帯として「広辞苑」に載っている物の事でしょうか。

 

・横座には灰平す父囲炉裏端

 

…横座は、「よこざ」。灰平すは、「はいならす」。
 横座は、囲炉裏端の主人の席のことですから下五の囲炉裏端といわずとも分かる事ですからどちらかを除きましょう。囲炉裏は季語ですから残して再考を。こういう意味の重なる表現が多いのでよくよく注意しましょう。

 

・凍てそうな白を集めし枕花

 

…枕花は、「まくらばな」。

 

・蒼天や槭樹紅葉に日の恵み

 

…槭樹は、「かえで」。 広辞苑で「かえで」を引くと「槭樹・楓」と出ます。漢和辞典には「カエデ科の落葉高木。たかおもみじ」とあり、句会の折に話していますが安行のもみじ専門の植木屋さんは槭樹園(もみじえん)と名乗っています。
 

 ハゼやウルシ、ヌルデなどの紅葉を言うときは櫨紅葉とか漆紅葉などと言い分けることがあります。「槭樹紅葉」は、この例で言うと文字通りカエデ紅葉の意なのでしょうか。カエデもモミジもカエデ科の植物で、紅葉をいうときは、一般にはうるさく分けていないようですが葉の五列の切込みの鋭いものを盆栽や植木屋さんでは区別して「モミジ」と言っているようです。
 

 ところでカエデは「楓」と書くものと思っていますが
葉のよく似たマンサク科の植物に楓(ふう)と言う木があり、誤用されて国字として使われ今に至っています。
水元公園にある「紅葉葉楓」の葉は文字通りカエデの葉のような形をしています。槭樹よりも見た目も美しい楓の字が使われるようになったのもこれで分かります。
 槭樹の槭は、草木の葉がしぼんで落ちるさまをいう漢字とか。即物主義の彼の国らしい見立てです。