◆2019・05月号

目次

1.  4月定例句会報

2. 4月句楽吟行 桜求めて

3. 俳句の語句の読み方

◎1.定例句会報  2019・4月  於・2019・4・28

入選句

 

芽柳や汀を濁す渡し舟        シミ

初鰹ぐい呑み並べ我が書斎      アノ   ※原句・初鰹ぐい吞み並ぶわが書斎

正札に雌雄の区別植木市       シミ

ゆく春や旅のをはりの山手線     チシ

春の雷北条五代の墓処        チシ

パーゴラのベンチがありぬ花の昼   イケ

松おぼろ関の八幡太郎像       アヒ

飴切の音の中行く花まつり      シケ

帰る子に手を振り返し春深む     チシ

鳥の巣箱掛ける授業の小学校     チシ

甲斐駒へ鳥の巣箱の真向いに     シミ   ※原句・鳥の巣箱甲斐駒ヶ岳真向いに

 

 

◆一句半解

 

〇諍いの後の気まずさ桜冷え

 

※「桜冷え」という季語を使うのであれば、気まずさに、この意は含まれているので安易に「気まずさ」と言わなくともよいでしょう。

この季語は「花冷え」の傍題ですが、花冷えとは違って詠み手の意思を表明する強さがあります。

 

主観の句なので添削はできません。 

 

 

〇当り木に母の摺り癖さくら冷え

 

※この句、「当り木に母の摺り癖」とありますから「母専用の擂粉木」ということです。いつも使っている擂粉木と言う事。そういう台所仕事を目にしているのでしょうか。作者が70歳を超えているようですからその母親と言えば90歳は越えているでしょう。そしてその母とは、家付きの娘と言う事もあるかもしれませんが多くは嫁ぎ先の母親ということになるでしょう。

その点現実味が欠けていませんか。

 

回想句ということもありうるでしょう。嫁ぐ前の作者がたまたま母親が使っていた擂粉木を目にしたのでしょうか。

 

擂粉木に摺り癖といえるほど、はっきりと出るものでしょうか。

 

単純に、この句はそういう設定を作った句のようにも思えます。言い換えるとよくある俳句のための俳句のようにも思えます。

 

このように捉えどころが実感をもって感じられないところが気になります。

 

「さくら冷え」を季語として使っていますが、この季語は「花冷え」の傍題ですが「花冷え」と違って、主観の勝った雰囲気をもった季語のようです。マイナスのイメージで鑑賞されてしまうでしょう。

 

 捉えどころがないので添削が不可能な句です。

 

〇たんぽぽや一部残れる煉瓦塀

 

※この句は、<たんぽぽや壊れて残る煉瓦塀>

 

と、簡単に添削ができます。報告から情景の句に…

 

「壊れて残る」といことからその場所の歴史が浮かび上がってきます。

 その内容は、作者ではなく、「読者の心のままです。それが俳句表現です。

 

添削とは、発想転換・表現などのもう一つの方法を提示するものです。

 

添削は、最終決着でなくここからスタートしてください。

 

 

◎2.  今月の句楽吟行 桜求めて   4月6日

         
満開の花の上行く高速道          オミ
花万朶写真のように風の無く
花の咲く目には見えない塀のあり
膝小僧労り登る花の丘
うららかや川を行ったり来たりする

          


花の雲スカイツリーと高速道        イア
花満開バドミントンをする親子
古隅田川陸前橋の桜かな
パンジーの花の時計の十一時
土手の草掻き分け探すつくしんぼ

          


燕とぶ荒川土手を歩きゐる         チシ
満開の桜の下の花時計
旧街道名残の橋の雪柳
行く先々桜を愛でる一日かな
花追ひて公園巡りの一日かな

          


拘置所の森閑として花霞          アヒ

たたなはる桜の中の高速路
イクメンに子供三人たんぽぽ黄
足幅に会はぬ石段花の塵
花を観し夜のまな裏の桜色

         


拘置所の門衛一人花の昼          アノ
つばくらめ歓声上がるホームラン
蓬摘む男脇目も振らず摘む
「差し入れ所」の案内看板花馬酔木
拘置所のかつての塀跡桜咲く

          


遠目にも殊に目立ちぬたんぽぽ黄      シミ
塀の無き東京拘置所亀の鳴く
教会に明かり一燈たんぽぽ黄
フットサルコート弾ける春の声
春落葉古隅田川緑道に

         


風光る旧街道の要垣            フチ
古隅田川ゆらいで二羽の春の鴨
石段を上りて行けば花九分
人影に寄り来る鯉や春の水
のどけしや長針進む花時計

          


ホームより見える拘置所花の雲       ヤミ
たんぽぽや一部残れる煉瓦塀
土手越しのはじける声やつくしんぼ
雀・烏・花ゑんどうは住み分けり
小菅県の文字ゆかしけれ春深し

          


桜散る無用の用と言ふごとく       トンボ
行くごとに声をかけくる桜かな
人の行く後ろに尾いて行き桜
戯言に応へるやうに花散らす
拘置所をぐるりと囲む桜かな

桜求めてという吟行です。そのテーマを全く無視したような人がおりますが残念です

 

◎3. 俳句の語句の読み

・操るも木偶人形も春や寒

 

…木偶人形は、「でくにんぎょう」。

 

・白毫を発ちて飛びくる春の風

 

…白毫は、「びゃくごう」。

 

・永き日の半ドンを持て余しけり

 

…半ドンは、「はんドン」。午後が休みの日。「ドン」は「ドンタク」のことで休みの意。現在では、死語化している?。

 

・楚々として蘖継ぎし命かな

 

…蘖は、「ひこばえ」。春の季語。

 

・春耕に未だ間のある散居村

 

…散居村は、「さんきょそん」。広大な耕地の中に民家(孤立荘宅)が散らばって点在する集落形態。一般的には散村と呼ばれる。
島根県の出雲平野、香川県の讃岐平野、静岡県の大井川扇状地、長崎県の壱岐島、北海道の十勝平野、岩手県の胆沢扇状地、秋田県の横手盆地北部(仙北平野)、富山県の砺波平野や黒部川扇状地などがその典型例で、なかでも日本国内最大とされる砺波平野では現在、およそ220平方キロメートルに7千戸程度が散在し、散居村という呼び名で固定されています。この地では強風のよる火災の類焼を避けるためと言い、風を鎮める祀りが執り行われています。各地、固有の理由があるようです。

 

・八掛を見せる踊りや春寒し

 

…八掛は、「はっかけ」。裾まわしのこと。上方の言葉で江戸では吉原で使われたと言います。そのモノを示すことによってその踊の雰囲気や内容を暗示させています。俳句表現の一手。

 

・春寒し浦安舞の鈴の音

 

…浦安舞は、「うらやすまい」。昭和15年11月10日に開かれる「皇紀二千六百年奉祝会」に合わせ、全国神社に伝わる神楽舞を下地に新たに作られた神楽舞。昭和8年の昭和天皇御製 〈天地の神にぞ祈る朝なぎの海のごとくに波たたぬ世を〉が神楽の歌詞となっていると言います。以降、各神社で舞われるようになり、現在なにかと演じられています。なお、「うら」は心を指す古語。「うらやす」で心中の平穏を表しています。正式には巫女四人で舞う女舞で前半が扇舞後半が鈴舞です。

 

・焙烙におどる炒子や小晦日

 

…焙烙は、「ほうろく」。京都の壬生狂言では、「ほうらく」。
…炒子は、「いりこ}

 

・紗綾型のことを教はり梅真白…紗綾型は、「さやがた」。吟行で行った湯島天神の鳥居にありました。

この「卍崩し」はTVの「笑点」の大切の時の後ろの唐紙にも見られます。