◆2019・07月号

目次

 

◎1.  6月定例句会報

◎2. 6月句楽吟行 南千住素戔雄神社

◎3. 俳句の語句の読み方

 

 

◎1.定例句会報  2019・6月  於・2019・6・23

入選句

 

日傘して鳩山会館坂がかり       シケ

麦秋や夫婦のパン屋賑えり       オミ    原 句 麦秋の小さきパン屋賑えり

空青し墓地にきりりと文字摺草     イア

青梅雨や診療室のドア重し       シミ

数独にはまりておれば明け早し     イケ

ダム底に釣瓶井戸ある旱梅雨      ミノ    原 句 旱梅雨ダム底にある釣瓶井戸

黒揚羽中辺路道の道標         フチ    原 句 黒揚羽来し中辺路の道標

梅雨深く実家更地となりにけり     シケ

片蔭のテラスのワイン由比ヶ浜     アノ

立葵銭湯破風のかぶら懸魚       アヒ    原 句 立葵咲く銭湯のかぶら懸魚

海峡に近き駅舎の夏炉かな       シミ    原 句 海峡へ近き駅舎の夏炉かな

箱庭へ据ゑる故郷の川の石      アヒ     原 句 海峡に据ゑる故郷の川の石

齢一つ重ねる朝の四葩かな       イケ    原 句  齢一つ重ねし朝の四葩かな

 

 

 

 

◆設定に疑問が出る俳句

 

・炎昼やクレーン忙しき選手村

 ※いまだと、クレーンが忙しく動くのは、準備が進められている工事でオリンピックの事がと連想されますか、実は完成してから選手村と呼ばれる所のことでしょう。

オリンピックが終わった後のことであれば、解体工事のことでしょう。

一句の背景をきちんと把握して自分の立ち位置を意識することは重要です。

 

 ・灯台のらせん階段雲の峰

 ※灯台内のらせん階段から雲の峰が見えるのでしょうか。上の句と同じことが言えますが、自分の居場所を踏まえてこれを作句の基本に置きましょう。

 

・炎昼の玉音放送瀬戸の凪

 ※玉音放送があったのは遥か昔です。現在瀬戸の凪とどう関係するのでしょう。俳句は、われ、眼前、只今、を描くのが好いと言います。この句の意図は計りかりかねますが、<炎昼の玉音放送聞きし日も>の意と読んでおきましょう。これも上句と同じことが言えるでしょう。

 

・青柿に雨や迎への母待つ子

 ※??? 

なぜ、???なのか、各自で検討してみてください。

 

 

・久しなる知恵の輪解しソーダ水

 ※このような言葉を聴いたことがありません。

 

・目を瞠る金目の煮付け梅雨晴間

 ※目を瞠る金目の煮付けとそこに焦点がいっているのに梅雨晴間という季語を配されるとその結び目は奈辺に?梅雨晴間と云えば外へ出てみようという気持ち。目を瞠るという料理。どう結びつくのでしょうか。先の<灯台のらせん階段雲の峰>と同じような違和感があります。

 

・ポケットに山野草本夏帽子

 ※ポケットに山野草本夏帽子が入れてある句の意でしょうか。それなら好いでしょう。はっきり分かるように、<夏帽も山野草本もポケットに>などと工夫しましょう。夏帽子でよくあるダメな別の解釈もありますが敢えて触れないでおきましょう。夏帽子の句は案外落とし穴があります。注意しましょう。

 

◎2.  今月の句楽吟行 南千住素戔雄神社   6月1日


神鏡や下界の緑映しおり            いあ
祭明日素戔雄神社人の出て
緑陰や蘇民将来の幟揺れ
境内に青桃多し朱印待つ
初夏の風川を渡れば宿場跡

 

 

若葉風蘇民将来幟立つ             ちし
椎若葉社殿にありしさざれ石
薫風や奥の細道矢立の碑
紫陽花の色とりどりの神の庭
大川を渡る夏風受けてをり

 


疫神を祀る神社の花榊             しみ
万緑の中に闇ある社かな
清清し素戔雄神社夏真昼
新たなる色を交えて樟若葉
万緑や気根の垂るる大銀杏

 

 

天王社獅子の子落し緑さす           あひ 
解説の曰く因縁藪蚊出る
砂浴びをしてゐる雀薄暑なる
天王社天王祭明日にして
即決す昼の定食豆御飯

 

 

立葵街道筋の天王社              あの
祭待つ氏子六十一ケ町
青葉風でんと八紘一宇の碑
芭蕉さんどの岸降りた夏の川
天王祭明日に控えて町静か

 

 

紙垂下る桃の圃場や蚊を払ふ          ふち
椎若葉龍の口より手水かな
大橋を渡れば千住夏の風
代表の祈願幟や若葉風
緑陰の瑞光石のある祠

 

 

夏暑き千住大橋渡りけり            やみ
梅の実や芭蕉の句碑へ笠と杖
六月や矢立の地踏む朝の風
桑の実の色を違へて実りをり
「蘇民将来子孫也」の旗ひるがへる夏の風

 

 

矢立の碑大川挟み在りて夏          とんぼ
何となく牛王天社へ急ぎけり
山車人形熊坂長範祭待つ
明日待てる蘇民将来子孫也
汗拭ふ祭提灯飾る町

◎3. 俳句の語句の読み

※何時ものように、任意に取り上げる句を選んでいます。

 

・しろがねもくがねも玉も喜見城

 

 …しろがねもくがねは、「銀も黄金」。
 …喜見城は「きけんじょう」。蜃気楼の別称。

 

・画廊から画廊へめぐる遅日かな

 

 …へめぐるは、「経回る」、「経巡る」。

 

・象キリン河馬に獏ゐて春惜む

 

 …獏は、「ばく」。ウマ科バク科哺乳類の総称。人の悪夢を食うと伝える想像上の動物のバクを暗示している句。

 

・蘆の角釣人並ぶ小合溜

 

 …蘆の角は、「あしのつの」。蘆は若芽をつんと空に突き出すことから俳句古来の言い方として使われている。春の季語。

 

・パーゴラのベンチがありぬ花の昼

 

 …パーゴラは建築用語のひとつ。「つる性の植物を絡ませる木材などで組んだ棚。日陰棚、つる棚、緑廊のこと。日本では藤棚が一般的である」と、書いてあります。

 

・初咲きの一ひら攫う桜まじ

 

 …桜まじは、「さくらまじ」・サクラの咲く時期に吹く暖かい南風。瀬戸内海や広島県、山口県、宮崎県などで使われる呼び名で、冬の季節風に代わって、四月ごろにから吹き始める南寄りの季節風であると歳時記に書かれている。

 

・鹿威しこつんと響く蝌蚪の池

 

 …鹿威しは、「ししおどし」。添水のこと。

 

・金平糖ごとき花つく黒文字や

 

 …黒文字は、「くろもじ」。「広辞苑」にはクスノキ科の落葉低木。高さ2メートル余。樹皮は緑色で黒斑があり、それを文字に見立てたのが名の由来という」、と書いてあります。

 

・霾や照り降り人形廻り出す

 

 …霾は、「つちふる」。まさに風が土砂を巻きあげて降らせるところから。黄砂の事。
 いま、中国では、「霾」の字は、土やほこりなどを多く含んだ、よどんだ大気やスモッグのことを指す意で使われているようです。
 …照り降り人形は、「てりふりにんぎょう」。箱根みやげに天候によって、家から男女の人形が出たり入ったりするという「てりふりにんぎょう」のことでしょう。

 

・たたなはる桜の中の高速路

 

 …たたなはるは、「畳なはる」。万葉集に出てくる言葉で、重なり合って列なっている状景。

 

・風光る旧街道の要垣

 

 …要垣は、「かなめがき」。カナメモチの生垣。