目次
◎1. 8月定例句会報
◎2. 8月句楽吟行 夏休み
◎3. 俳句の語句の読み方
入選句
桃吹くや利根の河原の利根の風 ヤミ
ひと刷毛の雲や浅間嶺今朝の秋 アヒ 原 句 浅間嶺にひと刷毛の雲今朝の秋
十薬を踏んで踊の輪の内へ チシ
白々と垣根の木槿咲き初めし ヒタ
杖をつく散歩の仲間かき氷 ハセ 原 句 杖をつき仲間と散歩かき氷
もう夫の行ってしまうか流灯会 イケ 原 句 もう夫の去ってしまうか流灯会
桃を描く桃の香りを色にして アヒ
大盛のカレーライスや涼新た ヤミ 原 句 大盛のカレーを食べて涼新た
蔵と蔵つなぐ土橋や花木槿 アノ
公園の散歩に木槿白き花 ハセ 原 句 公園の散歩や木槿花白し
懸命に咲きてひと日の木槿かな ヒタ
祖父の墓守りて白き木槿かな ナミ
俳句には五七五というリズムがあります。
このリズムを活かしましょう。
未だに散文ような句が多く、その点に留意して添削をしています。
流灯会の句では、「去って」とありますが、感情を抑えることが俳句の表現です…。
何れも何回も注意している事柄です。
◆ ◆ ◆
そのほかの添削句を以下に挙げておきます。
原句 木槿咲くはらから集ふ夢の中 添削 木槿咲くはらから集ふ夢を見て
※夢の中で咲いていた木槿として詠みあげていますがやはりこれは現実の木槿として初めて作品になるということに気づいてください。
原句 姉の居る妹の居る幸夏の庭 添削 妹も姉も居る幸夏休み
※妹は、「いもう」と読むか、「いも」と読むかで詩歌では意味が異なります。原句では「いも」と読むようになっていますが、詩歌では「いも」は、男が女を親しんで言う語として多く使われます。これを意識して避けられるならばどうすればよいかを考えてみましょう。
原句 東京の帰省子待てる母化粧 添削 吾が帰省待ちてし母の化粧して
※俳句では、詠み手がその句の主人公。そう詠むのが大前提です。そうしているからこそ、ことば足らずでも句意を読みとることができます。
この句の内容を聞き取り、翻訳してみたのが掲句です。「化粧」は「けわい(けはい)」と読みます。
原句 天然の削り氷ふはり舌に溶く 添削 天然の削り氷ふはり舌に置く
※削り氷は「けずりひ」と読みます。この言葉に「舌に溶く」はいかにも不似合いでしょう。
いずれにせよ沢山の佳い俳句を読んで覚えて暗唱。先人の俳句から学べることは多いはずです。
・道をしへ海坂藩はどの辺り
…道をしへは、「みちおしえ」。斑猫のこと。夏の季語。
…海坂藩は、「うなさかはん」。藤沢周平の時代小説に登場する架空の藩。
・蟬津々仏足石へひびかせる
…蟬津々は、「せみしんしん」。
・黒揚羽中辺路道の道標
…中辺路道は、「なかへじみち」。熊野古道のひとつ。
・肝心な場面落丁虎が雨
…落丁は、「らくっちょう」。書籍の一部ページが抜け落ちていること。
…虎が雨は、「とらがあめ」。
陰暦5月28日に降る雨。
この日、曾我十郎が死に、それを悲しんだ愛人の遊女虎御前の涙が雨となって降ると伝える。夏の季語。大磯の虎ともいわれる遊女虎御前が絡むのでこの本、春本でしょう。
・夏衾友が快気の添手紙
…夏衾は、「なつふすま」。
・万緑の田母沢邸の部屋の数
…田母沢邸は、「たもざわてい」。日光田母沢御用邸のこと。元は皇太子時代の大正天皇の静養所として造営された旧御用邸の建物。庭園を公園として整備し一般公開している。
・紫陽花の色合い美妙皆んな好き
…美妙は、「びみょう」。美しくたえなること。「皆んな好き」は異味不明。
・六月六日稽古始めの礼する娘
…礼する娘は「いやするこ」。
・炎昼や悉皆草木声たてぬ
…悉皆草木は、「しっかいそうもく」。
・忍冬路地のさざめき女学生
…忍冬は、「すいかずら」。忍冬の花は、夏の季語。
・相番の春の交通見張り役
…相番は、「あいばん」。一緒に当番すること。
・祭明日素戔雄神社人の出て
…素戔雄神社は「すさのおじんじゃ」。南千住の「スサノオ神社」の表記は素戔嗚尊神社でない。
・緑蔭や蘇民将来の幟揺れ
…蘇民将来は、「そみんしょうらい」。「蘇民将来子孫也」と書かれた縁起ものがこの神社でいただける。
・疫神を祀る神社の花榊
…疫神は、「えきじん」。疫病を流行らせるという悪神。