◆2019・12月号

目次

 

◎1. 11月定例句会報

◎2.  11月句楽吟行 小泉八雲記念公園

◎3. 俳句の語句の読み方

 

◎1.定例句会報  2019・11月  於・2019・11・24

入選句

 

大根料理ばつかりなどとは言はせずに      フチ

伝言を聞いて喜ぶ冬初め            ミノ

秋高し五十階の部屋に覚め           イア  原 句 目覚めたる五十階の部屋秋高し

通院路黄葉の香り溢れけり

半蔀へ移る夕日や紅葉寒            アヒ  原 句 半蔀に移る夕日や紅葉冷

堤防の嵩上げ工事昼の虫

読返す師よりの手紙冬の月           シケ

行く秋や遊子かなしむ懐古園          アノ

大根引く都市農園の二人かな          アノ  原 句 大根引く都市農園の若夫婦

懸大根少し屈んで回覧板

       

 

◎2.  今月の句楽吟行 11月02日 小泉八雲記念公園

作品抄

         
日溜りへ猫の寄り来る冬隣                          ミノ
秋風のエンタシスなど吹き抜ける
草の花大久保つつじの発祥地
秋うらら死生観など語り合う
波頭立ちいるごとく秋の空

 

          
おのおのに石の椅子あり秋の空    フチ
大久保のいま居る庭の秋日和
秋蝶のとまるやマップのギリシャの上
秋蝶に行方聞きたし八雲像
ものなべて低く富士塚黄落す

 

        
猫呼びて戯る乙女ら秋の園      イア
エンタシス囲みて写真秋うらら
喧騒を抜けて社や秋気澄む
ビル群の狭間のんどり秋の雲
水澄むや鬼の水鉢鬼王神社

         


草紅葉ラフカディオハーン住みし跡  アノ
ギリシャ風造りの庭の薄紅葉
清楚なる五人の乙女さわやかに
鶏頭花舗装タイルにレフカダ島
紅葉かつ散る文人八雲の像

 

          
身に入むや異境に眠る人のあり    アヒ
三匹の猫と乙女ら秋日和
ベランダの洗濯物と吊し柿
社より低く富士塚草の花
この先は百人町や秋の雲

 

         
ラフカディオ・ハーン生きた証や秋の蝶  オミ
怪談に震えたことも秋深し
新宿に干柿吊す家のあり
秋の空シルバーパスの出番です
銀杏散る鬼王神社を抜けにけり 

 

          
秋日和終焉の地に子等の声      ヤミ
花園を巡る秋蝶エンタシス
ギリシャ人八雲胸像秋深む
秋天や空にすつくとオリーヴ樹
にぎやかに人もけものも秋うらら

 

          
柿干して此処は大久保一丁目     トンボ
乙女らの笑ひあひ居る猫じやらし
ラフカディオ・ハーンぞギリシャ秋の雲
ギリシャへと秋雲追うて行けさうに
秋深し佇立するビル目前す

◎3. 俳句の語句の読みプラス・寸言

・妹背鳥仏足石を叩きけり

 

…妹背鳥は、「いもせどり」。鶺鴒の異称。

 

・過去は見ゆ未来は見えず鵙の蜷

 

…鵙の蜷は、鵙の贄のミスプリで「もずのにえ」。秋の季語。

 

・小鳥来て金剛合掌ほどきけり

 

…金剛合掌は、「こんごうがっしょう」。

 

・蔕付きのままに茄子焼く母譲り

 

…蔕は、「へた」。  

 

・踵から踏む五千歩や秋高し

 

…踵は、「かかと」。

 

・飼犬の肝を潰すや稲つるび

 

…稲つるびは、「いなつるび」。いなびかりのこと。

 

・過ぎし日を真似て芋幹軒に干す

 

…芋幹は、「いもがら」。ずいき。

 

・芝神明だらだら祭大鳥居

 

…だらだら祭は、東京、芝大神宮の例大祭の俗称。9月11日より21日までの長期間行われるところから。

 

・定家葛明日は明日の色に咲く

 

…定家葛は、「ていかかずら」。能・謡曲の「定家」に由来する名前。  

 

あらすじを借用して紹介します。「京都を旅していた僧侶が夕立にあい、雨宿りで駆け込んだところが、昔歌人の「藤原定家」(西暦一二〇〇年頃の人)が建てた家だった。どこからか現れた女性が、その僧侶を葛(つる)のからんだ「式子内親王(平安時代の、後白河法皇の第三皇女)」の墓に案内し、こう語った。藤原定家は式子内親王を慕い続けていたが、内親王は49歳で亡くなってしまい、定家が式子内親王を想う執心が葛となって内親王の墓にからみついてしまった。内親王の霊は葛が墓石にからんで苦しがっているらしい。僧侶はそれを聞き、内親王の成仏を願って墓の前で読経した。実は、先ほどの女性は式子内親王本人の「霊」で、僧侶が読経してくれたことで成仏できて喜んだ。そして、このからみついた「葛」に後年定家葛と名前がつけられた」のだという。

 

・露の川うんたらたーかんまんと

 

…うんたらたーかんまんは、不動明王御真言の一節。日光名所の憾満ヶ淵は、水の流れがこの御真言のように「うんたらたー…」と聞こえると感じて名づけられたと云われています。

 

・結髪の女居る写真秋扇

 

…結髪は、「けっぱつ」。丸髷、島田髷などの日本髪のこと。