▲2020・01月号

目次

 

◎1. 12月定例句会報

◎2.  12月句楽吟行 安行興禅院・小林槭樹園

◎3. 俳句の語句の読み方

◎1.定例句会報  2019・12月  於・2019・12・15

入選句

 

初時雨観音裏の古着店          チシ

爐話や笑い上戸に泣き上戸        コフ

冬ぬくし眼鏡拭えば空広し        イケ   原 句 冬ぬくし目鏡拭えば空広し

大垣の大富有柿届きけり         イケ

蔵多し三国街道雁木みち         チシ

焼カキの香りまとひて夫帰る       ヤミ

丹田に力や畦の空つ風          アヒ

冬耕や地球の手入れ怠らず        アヒ

菊枯れて大日如来煤おろし        ナミ

文人の泊りし宿の河豚尽くし       シミ   原 句 文人の泊りし宿屋河豚の膳

まじまじと見たること無き河豚の面    イケ

大皿の模様浮き出る河豚尽くし      ミノ   原 句  大皿の模様浮き出る河豚の宿

鰭酒の河豚の香気に噎せて居り      オミ

◎2.  今月の句楽吟行 11月30日 安行興禅院・小林槭樹園

当日句

 

          
着ぶくれて弁財天へ礼深し         シケ
歳時記に挟むひとひら散紅葉
正一位稲荷へ冬陽覆ひゐる
心ゆくランチのありて白障子
露地売の器量良き柚子手に入るる


        
野佛の続く小径や黄葉踏む         イア
微笑める六地蔵尊毛糸帽
人集うしだれもみじのベンチかな
紅葉狩露店の野菜買い漁る
墓地の中辿りて会える冬桜


          
小六月千手観音菩薩かな          チシ
家苞の銀杏買うて戻りけり
色のよき柚子あり無人販売所
紅葉のまつただ中の冬桜
短日やバス停までを急ぎ足 


          
山茶花の白の際立つ法の庭         ミノ
落葉道踏みしめ下る放生池
老木を這い上りゆく蔦紅葉
新築の家の並んで冬日和
植木束いくつも並べ天高し


        
団栗の踏んではじける田舎道        オミ
野紺菊写真に納め冬の庭
抱かれ地蔵窮屈そうに冬に入る
柚子の木の植木屋通り黄金色
平台の柚子を求める年用意


          
大木の抱く地蔵や冬日和         フチ
参道の石仏にある野紺菊
逆光に写る仲間と冬紅葉
青空のありて色増す冬紅葉
石仏を辿る木道散り紅葉


         
十三仏巡る落葉の九十九折        シミ
冬桜誉める三人加わりぬ
また見んと登りて来る冬桜
売店に売切れの札山茶花散る
店番の翁の呉れたる蜜柑甘し
        


街道の戸毎戸毎の柚子たわわ       アノ
どんぐりと落葉と紅葉興禅院
群青の空へ柚子の実黄のたわわ
戦没者供養の卒塔婆小春空
なすがまま落葉嵩なす法の山
          


ひと休み枝垂れ紅葉の傘の中       アヒ
濃淡の紅葉もみぢに染まりけり
柚子の木の下に柚子売る直売所
たれかれと話の弾む紅葉晴
冬桜活けて寿司屋のカウンター 


          
門までのゆるき下りや紅葉冴ゆ      ヤミ
風寒し白蛇の像に背を向けぬ
安行の紅葉爛漫にぎり寿司
小春日や瓦の道へ光立つ
山紅葉人を集めてけざやかに


          
指差して声にも出して冬桜        トンボ
冬紅葉滴滴滴と露こぼれ
あつまれる光ぞ神ゆ冬紅葉
嫗らの寄りて輝く冬紅葉
けふの色光りて尽くす冬紅葉

◎3. 俳句の語句の読みプラス・寸言

・言うなれば十日の菊の首尾なりし

 

…十日の菊は、「とおかのきく」。菊は九月九日の菊の節句のもので十日では時機に遅れて役に立たないというたとえ。六日の菖蒲と対にしても言う。

 

・秋の夜の古代裂など取り出しぬ

 

…古代裂は「こだいぎれ」。広辞苑によれば、古代の織物の裂地。正倉院・法隆寺所蔵の大陸からの伝来品など。

 

・猫脚の椅子のサロンや秋深む

 

…猫足(ねこあし)。 実物を見ればすぐこれと納得できるでしょう。

 

・高擌や夫の饒舌疎開村

 

…擌は、漢和辞典によれば「さく」「しゃく」と読み、鳥を捕らえる器具のようです。

 擌の字を頼りに調べたところ『精選版 日本国語大辞典』に「はが」としてありました。鳥を捕える仕掛けの一つ。竹の棒や木の枝わらなどに黐(もち)を塗り、田の中などの囮そばに置いて鳥を捕えるもの。「はご」。黐擌とも書く。「はが」で、広辞苑を開くと同様な解説が出ています。

 とすればこの「高擌」は「たかはが」と読むのでしよう。

 

・草蝨旅行鞄に忍び入る…草蝨は、「くじらみ」。蝨は、虱の本字。

 

・廬山寺てふ古寺の白砂の草紅葉

 

…廬山寺は「ろざんじ」。「平安京東郊の中河の地」すなわち現在の廬山寺の境内(全域)、嘗て紫式部が住んでいた所として知られています。

 

・身に沁むや輪蔵ゆっくり廻しおりす

 

…輪蔵は、「輪蔵」。仏教の寺院内等に設けられる経蔵の一種。八面になっていて一般には、この経蔵を回転させると、それだけで経典全巻を読誦したのと同等の御利益が得られるものと信じられている。転輪蔵とも。

 

・三輪山にかかりて美しき居待月

 

…三輪山は「みわやま」。奈良県桜井市にある山。大神神社のご神体。
  

 

・都鳥それとも鷗秋日和

 

…都鳥は、「みやこどり」。この句でいう鷗は、ゆりかもめでしょう。隅田川を船で下る吟行での所見句です。伊勢物語では「都鳥」のことを「白き鳥の嘴と脚と赤き、しぎの大きさなる、水の上に遊びつつ魚を食ふ。」と説明していて、大きさや体の特徴、水面を泳ぎながら魚を食べている事などから、この鳥はユリカモメと推定されています。

 

・溢れ蚊や市場の跡へ来てみれば…溢れ蚊は「あぶれが」。秋の蚊の見るからに弱弱しいところから秋の季語。