▲2020・03月号

目次

 

◎1. 02月定例句会報

◎2. 句楽吟行 澤田美喜記念館 ・旧吉田茂邸

◎3. 俳句の語句の読み方

◎1.定例句会報  2020・2月  於・2020・02・23

 

入選句

 

春近し学校までの通学路           オミ

先考(せんこう)の勲(いさおし)写真春の雨 シケ  原 句 考にある勲の写真春の雨

春光や黒光りする古机            ヒタ

春炬燵余生といふをたまはりて        チシ

赤城山軒をからから凍豆腐          シミ

光り得てひしめき合える芽吹きかな      ナミ

糠床の天地返して春近し           コフ

腕の中嬰の寝息や春の風           シケ  原 句 腕なかに嬰の寝息や春の風

一歩ずつ老犬老女青き踏む          アノ  原 句 寄り添いて老犬老女青き踏む

梅まつり苗木一本買ひ帰る          チシ  原 句 梅まつり苗木貰ひて戻りけり

 

◎2.  句楽吟行 2月01日 澤田美喜記念館・旧吉田茂邸

          
あたたかし触れて確かむ四方竹     イア
兜門入り梅の香や旧吉田邸
西行を偲びし庵や実千両
うららかや見付跡ある松並木
鴫立庵虎御前像や寒椿

          


兜門くぐり庭園梅日和         チシ
砂丘から望む海光冬うらら
魔鏡からキリスト浮かぶ春を待つ
東海道走る車窓に雪の富士
日脚伸ぶ波おだやかな相模湾

          


旧坂の木の間隠れの雪の富士     アノ

駅前の丘の急坂四温晴
冬帽を手にす殉教記念館
殉教を秘めたる冬の館かな
リゾットにコーヒー二杯春そこに

          


白山茶花散る澤田美喜記念館     アヒ
木の間越し冬の名残の富士晴れて
ロサリオを汝が命とも雪中花
冬尽くる死語なる「隠れ切支丹」
晴天の碧梧桐忌を大磯に

          


収集の十字架像と雪の富士      オミ
マスクして東京駅の十番線
大磯の渚のつづく春隣
如月やサンフランシスコを向く銅像
白梅や昔のままの兜門

         


ロマネスコ売る大磯や春隣      フチ
冬うらら女三人東海道
梅の香やかんばせ和む女たち
冬夕焼鴫立庵の西行像
遺りゐる七賢堂や梅香る

          


湘南の碑のあり大磯春近し      ヤミ
たたずめば早梅薫る七賢堂
冬椿主亡き館の兜門
古鏡されど魔鏡や冬木の芽
松よけて富士を眺むや磯の浜

          


冬晴や隠れてキリスト遺物館     トンボ
日脚伸ぶ遺品ぞ潜伏キリシタン
休館の札あり白梅匂ひくる
元宰相住みにし庭の紅白梅
春近し鶴亀庭園水濁る

 

◎3. 俳句の語句の読みプラス・寸言

・梟や刺青隠せる人のゐる

 

…刺青は、「しせい」。 入れ墨の事。文章語として使われていたもの。最近、タトウと言われるものもありますが、いずれも入れ墨のこと。

入れ墨を思わせる装飾がある埴輪も出土しています。文身などとも言われています。

二千五百年前のアルタイ王女のミイラの腕の部分の皮膚に入れ墨が残されていることなどが知られています。さて、入れ墨とは何なんでしょう。

 

・丹田に力や畦の空つ風

 

…丹田は、「たんでん」。

 

・襟巻の狐の顔を見ずなりぬ

 

…襟巻は、「えりまき」。高浜虚子の「襟巻の狐の顔は別にあり」を意識しての句。

 

・ファゴットの奏でるソナタ冬の朝

 

…ファゴットは、木管楽器の一つ。

 

・冬紅葉浮世絵展の団菊佐

 

…団菊佐は、「だんきくさ」。団菊佐と言えば、明治の三名優と言われた市川團十郎・尾上菊五郎・市川左團次のこと。芝居絵として錦絵でも人気だったと言います。

 

・袴腰の鐘の音やわし茶の花や

 

…袴腰は、「はかまごし」。鐘楼の句の様ですからこれは、鐘楼や行灯の下層の末広がりの部分。句意、よくわかりません。

 

・地下鉄いで行幸通黄葉舞う

 

…行幸通は、「ぎょうこうどおり」。
…黄葉は、「もみじ」。

 

・指物師作りし酒器や十二月

 

…指物師は、「さしものし」。箪笥などの指物を作る職人。 

 

・豊国の青鈍死絵や外は雪

 

…青鈍死絵は、「あおにびしにえ」と読むのでしょう。青鈍は、青みがかった薄墨色。仏事や喪中のときに用いた。死絵は、主に歌舞伎役者が死去したとき、その訃報と追善を兼ねて版行された浮世絵。

 

・紅葉や多聞櫓の見え隠れ…多門櫓は、「たもんやぐら」。城の石垣上の長屋。