目次
◎1. 05月定例句会報(誌上句会)
◎2. 句楽吟行 新緑の頃(誌上吟行)
◎3. 俳句の語句の読み方
●今月の「松韻」「兼題」から
山小屋へ続く木道水芭蕉 あひ
潮引きし船着き場跡夏柳 あの
大南風振り幅大き象の鼻 しみ
卵塔を離れぬままの黒揚羽 しみ
石楠花の庭の華やぐ転居跡 なみ
原 句(芍薬の庭の華やぎ転居跡)
ズボン丈少し詰めたる更衣 しけ
原 句(更衣少し詰めたるズボン丈)
早苗饗や嫁と姑うす化粧 こふ
ひと花の在りて芍薬千の香 こふ
原 句(ひと花の有りて芍薬千の香)
ベンガラの甍の吹屋風薫る ふち
一車輛一人だけ居る春の昼 いあ
芍薬や「見返り美人」旅の宿 いあ
母の日の届く荷の中マスク有り ちし
風薫る天神下の甘味処 ちし
生き残る店の軒先燕の子 ひた
豆ごはん記憶の一つ母の声 ひた
雨催い半分開く棕櫚の花 みの
◆ 課題・新緑の頃
以下添削句 ※ ( )内は、添削句
・源平の戦場跡やぶな若葉
・新緑の寺町通り小糠雨
・新緑を纏いて風の古城かな
・顔も手もみどりに染まる若葉風
・全山の新緑映すダム湖かな
・若葉風床屋のタオル外に干される
(若葉風タオル干しゐる理髪店)
・若楓尼さまの説く倶会一処
(若楓尼さま説ける倶会一処)
・葉桜や国府の門の手斧跡
(葉桜や国府の門の手斧痕)
・公園に禁止のテープ青葉冷
(公園へ立入禁止青葉闇)
・買ひ物は三日に一度松葉散る
(買物は三日に一度散松葉)
・新緑や御用邸への径分れ
(新緑や御用邸への分れ径)
・鶴頸の青磁の花器の涼しさよ
(鶴頸の青磁の花器や青葉闇)
・緑蔭に移動スーパー賑えり
(緑蔭や移動スーパー賑える)
・金継ぎの壺の高値や夜店の灯
(金継の皿や壺にも夜店の灯)
・連山の主峰写せり代田水
(連山の主峰写せる代田水)
・万緑や風に聞こえるオノマトペ
(万緑や風の生みだすオノマトペ)
・鶴翼の陣形崩す蝌蚪の陣
…鶴翼の陣形、「かくよくのじんけい」。
・ヘルン居の跡地学校春蚊出づ
…ヘルンは小泉八雲のこと。
・花冷の三幅対と青畳
…三幅対は、「さんぷくつい」。三つで一組になっている掛物。
・みすゞ忌や私は私ひとり居る
…みすゞは、童謡詩人金子みすゞ。本名はテル。西条八十に認められ二十二歳で結婚し一女をもうけたが、夫の放蕩が原因で離婚し二十六歳で睡眠薬自殺を遂げた。手帳に書き残された512編の詩が、死後五十年以上過ぎた1984年に金子みすゞ全集全三集として刊行され、1990年代に幻の童謡詩人として再評価され作品集や評伝などが多数出版された。
・山笑う東京の水恃みけり
…恃みは、「たのみ」。何かをあてにするという意。「山笑う」で始まり結句を「恃みけり」と結んでいますので、何に、あるいは誰に恃んだのか分りません。「けり」で結ぶときは、一気呵成に、《笑む山へ東京の水恃みけり》です。
一句の中に段切れが無いので一句一章の句といいます。季語を変形することに抵抗があれば、発想を変えて、句の見直しをしましょう。
一句の中に段切れを一つ置くことを二句一章といい、俳句の多くはこの形です。《東京の水を恃めば山笑う》。つまり段切れの後に「山笑う」を置く形です。この表現、一句の意を無限に拡げてくれます。
・みはるかす揖斐川尻の遠がすみ
…揖斐川は、「いびがわ」。岐阜県西部を流れ伊勢湾に注ぐ川。
・泡沫の戀や四葉の苜蓿
…泡沫は、「うたかた」。
…苜蓿は、「うまごやし」ですがここは、「クローバ」。
・ほつほつと句を拾ひ行く花木五倍子
…木五倍子は、「きぶし」。かな書きの方が漢字よりも字数が少ないことで話題になることもあります。果実は、黒色染料として使われ、古くは鉄漿に使われていたようです。