▲2020・07月号

目次

 

◎1. 06月定例句会報(誌上句会)

◎2. 句楽吟行 6月のものがたり(誌上吟行)

◎3. 俳句の語句の読み方

◎1.定例句会報 2020・6月(誌上句会)

入選句

 

・めまといに暇を取らるる午後三時        コフ

 

・薔薇に埋まる柩の顔や今しゃべりそう      イア

 ●添削句 薔薇に埋まる柩の顔やしゃべりそう

  

・見えくるや島影十字架梅雨晴間         イア

 ●見えてくる島影十字架梅雨晴間

 

・蕗煮付今なお母に及ばざる           シミ

 

・大夕立亀の棲む池満ちて来し          シミ

 

・猫と犬居据る尼寺や額の花           フチ

 ●添削句 猫と犬居据る尼寺額の花

 

・コロナ禍の夏安居に似る自粛かな        ヒタ

 ● コロナ禍の夏安居にも似る自粛

 

・麻訶不思議蘇民信仰青田波           オミ

 ● 摩訶不思議蘇民信仰青田波

 

・青梅の木から落ちたか雀の子          オミ

 ● 青梅の木から落ちたる雀の子

 

・教会の三角屋根や枇杷熟れる          オミ

 

・夏帽のリボンゆらして子が走る         ミノ

 

◎2.  句楽吟行 誌上吟行6月のものがたり

          

アカシアの花や真白き時計台       アヒ

六月の花を追ひかけ養蜂家

海光や蜜柑の花に羽音して

屋上に蜜蜂を飼ふ洋菓子屋

 

          

緑濃し会津街道はちみつ店        イア

アカシアの雨の舗道や喫茶店

蜂いるよそうっとそうっと通りゃんせ

蜂蜜を鯖煮に少し夕餉かな

 

          

高原に蜂の巣箱や樺の花         アノ

父の日に受く蜂蜜とみすゞ飴

試食する蜂蜜の味梅雨近し

薫風やサラダ蜂蜜パンケーキ

 

          

レンヂからパン取り出して夏の朝     チシ

蜜蜂の集まる都会のビルヂング

梅酒瓶洗ひ干したる夕薄暑

梅の実を売りにくる人待つてをり

 

         

蜂蜜の本物なりといたゞきし       ハセ

めずらしき蜂蜜つけてふとるかな

蜂蜜の本物かしらビン眺め

蜂蜜の家には縁の遠いかな

 

         

父の書体真似て幾年朴の花        イケ

母の吾を生したは四十路梅雨の朝

泡沫の恋すら知らで仏桑華

井然と水を湛えし植田かな

 

          

はちみつに仏語の荷札花マロニエ     シミ

水中花開けば狭しガラス壜

薔薇の園薔薇のポプリを壜詰めす

新茶汲む風も陽も入る父の席

           

この夏の昼餉夫焼くパンケーキ      フチ

風薫る銀座のビルのビーガーデン

アカシヤの花の甘きや街明り

父の日もありて銀座の包装紙

 

          

針槐養蜂人の旅語り           シケ

蜂蜜舐め自愛の夏となりにけり

時の日や恙二つと向ひつつ

白菖蒲蜘蛛手の橋へ夫とかな

 

          

夜半の雨留まり光る蜘蛛の圍に      コフ

髪結床出でて出会す大南風

葉柳や懐メロふっと口ずさむ

帝釈天飴切響くうなぎめし

 

         

デザートはいちごはちみつヨーグルト   ヒタ

マンドリンの音この頃消えて花は葉に

句集編み一服すする新茶かな

玉葱の蜂蜜酢漬け長寿とか

 

          

皺くちゃの指にマニキュア五月尽     ミノ

梅雨もよい空欄ばかりカレンダー

夜の雷思わず窓をかたく閉ず

好物の枇杷の到来する至福

 

         

朝食の蜂蜜レモン初夏の風       オミ

アカシヤの花の盛りの北の夢

思い出のハニーカステラ食べて夏

天然の瀬音水音梁簀鮎

 

         

野茨や尽れの蜂も力得し        ヤミ

六月の琥珀を選ぶ指白し

巣が一つ残る廂や梅雨に入る

ほどほどに夫は花好き燕子花

 

          

新緑の緑の模様カフェテラス       トンボ

片蔭やパンの香の立つ丸の内

足元へ絡みつきゐる夏落葉

麻服のくつきりと皺丸の内

 

◎3. 俳句の語句の読みプラス・寸言

  

・地震走る田鼠鴽と為るときは

 

 …地震は、「ない」。

 …田鼠鴽と為るとき、「でんそうずらとなるとき」。七十二候の一つ。田鼠化して鴽と為るの崩して使っているもの。春の季語。この際歳時記を調べてみよう。

 

・三日月とさくらのコラボ放哉忌

 

 …放哉忌は「ほうさいき」。尾崎放哉の忌で四月七日。現在の鳥取に明治十八年に生まれ、東大を出て生命保険会社に勤めたが酒癖の悪さなどなど会社勤めに適合せず大正十二年から各地の寺院などで求道と俳句の暮らしに入った。十四年、小豆島の南郷庵に入庵、句三昧に晩年を過ごした。自由律の俳人として活躍。〈咳をしても一人〉〈月夜の葦が折れとる〉などが代表作。四十一歳没した。忌日俳句は俳句の一分野ですが故事を踏まえて詠む。追悼の意を表するもので、「三日月」と「さくら」のコラボと言われてもどう読むべきか戸惑うばかりです。

 

・春荒れの町や居抜きのラーメン屋

 

 …居抜きは、「いぬき」。住宅や店舗を、家具や商品・設備をつけたまま売り又は貸す事。

 

・空の青野にも置きたり犬ふぐり

 

 …犬ふぐりは、「いぬふぐり」。漢字で書くと「犬陰嚢」。今、見られるものは「大犬ふぐり」で春の季語。植物辞典などには、〈じつは、オオイヌノフグリとは「大犬の”ふぐり”」ではなくて「大”イヌノフグリ”」なのです。明治の初期にヨーロッパから渡来したとき、すでに日本にはそれに似て小型の「イヌノフグリ」があったので、「オオイヌノフグリ」と名付けられたのです。そして、イヌノフグリの果実は「なるほど納得!」という形をしています〉。

 

・ビオトープそばに群成す幣こぶし

 

 …幣こぶしは、「しでこぶし」。

 …ビオトープは、野生の動植物が生態系を保って生息する環境。また、公園などに作られた、野生の小動物が生存できる環境。

 

・リラ冷や予定中止のまたひとつ

 

 …リラ冷は、「りらびえ」。リラは、ライラックの別名で5月下旬の北海道は、暖かくなったと思ったら急に冷え込むという気候の変化が見られます。そんな時期に札幌市民がふつうに使っている言葉、それが「リラ冷え」。本州でいう「花冷え」とほぼ同じ意味の言葉とされています。地方色の濃い季語。